漢数字の一は野生のトラに襲われた。
「野生の2か3であってくれ」という一の願いは果たして破られた。
それは紛れもなく虎であった。
「何でxy平面に虎をプロッティングしちゃうんだよ!」と叫びながら一は虎から逃げてゆく。
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数字クエストの真っ最中。
この場がxy平面と謳われているのを一はもう知っていた。
数字の本能でその場所が、xy平面であることを知っていたのだ。
「漢数字の一走りづれぇよ!」と言いつつ何とか(0,0)と(0,1)を結ぶ線分上を逃げ回っている。
そして、平面上にプロットされた虎も線分上を走り回る。
xy平面と言えども周りは普通に木が生い茂っているだけの空間だ。
数字たちから見たxy平面はこんな感じなのである。
我々人間から見る世界とさほど変わらない。
強いて言えば、数字たちがフィボナッチ数列をなしてランニングしているが、至って普通のジャングルである。
そのとき、木陰から何か飛び出した。
「めやゃゃあぁあぁああっっ!!」一は怖さのあまり変な声を出してしまった。
「5ぉーっ!!!」5だった。
「5か…」一は安堵した。
5は4以下の一には一瞥もくれず、森の中に消えていった。
最初のスタート位置(原点0)には、「x方向」,「y方向」の看板が建っていた。
一は自分がXとY、どっちのタイプの数字か分からず、「Xのほうが自分っぽいかも」という安易な理由でX方面に足を進めた。
しかし、「X方向」という看板は古いものであり、実際一が歩いている道はy=xの直線上であった。
「X軸上を自分の意志で歩いているぞ」という一の思いを逆撫でるように、y=xの直線はどんどんとジャングルを突っ切っている。
y=x上の一は、移動中に4、9、1と6のカップル、2と5のカップルと出会った。しかし、その出会いが「1、4、9、16、25…」と等比数列になっていたのも文系の一では気づかなかった。
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気づけば1は、沼地の前にいた。
そして、一の形姿も算用数字の1に戻っていた。
そばには看板が建っており、
『この先5≦x≦9の領域。4以下の数字通らざるべし。』
と書かれてある。
「何だこの表記は。差別だ」と1は思った。
まるで、4以下の数字が格下みたいな言い方じゃないか。
4以下の数字はレベルを上げて、5なり6なり6.5になる必要があると強要されているんじゃないのか。
1は自分のアイデンティティが傷つけられた気持ちになった。
しかし、5≦x≦9の領域内に侵入しないと遠回りになりそうである。
1は5以上の存在であるということを証明しなければならない。
1は自分が5以上の存在であることを証明するために、必死で考えた。
そして、
一生懸命タップダンスを「ダダダダダァン!!」と踊り、最後に「ヘェイッ!!」とシャウトしてみた。
しかし、1は4以下の存在であった。
xy平面上に「ヘェイッ!!」が響き渡る。
そのとき、後ろから-9がやってきた。
1は-9を見て、
「マイナスが付いてる…。哀れだなぁ。」
と侮蔑に近い感覚で三角コーナーの生ゴミを見るかのように-9を見ていた。
1は数字で物事を判断する性格なのである。
「マイナスなんて付いた数字がこの数字クエストでやっていける訳がないよ」
と1が思っていると、
-9は懐から絶対値を取り出し、自分に装着した。
すると、みるみるうちにマイナスが溶け、-9は9となった。
「そんな強化アイテムがあるのか…」
1は唖然とした。
そう、この世界には色々な強化アイテムがあり、それを駆使するのがこのクエストの攻略方法なのだ。
9は『5≦x≦9の沼地』をスイスイと進んでゆく。
そして1の足元には、-9が落とした絶対値が落ちている。
1は絶対値を拾い上げ、「ポンッポンッ」と土を払い、頭から被って自分に装着した。
しかし、何も変化はない。
今度はスカートを履くかのように絶対値をつけてみる。
しかし、何も変化はない。
その後ラスターレイヤーになってみたり、メイリオフォントになってみたり、漢数字に戻ってみたりしたが1の絶対値は1であった。
「ただの2本線じゃねぇか!!」1は絶対値を5≦x≦9領域に投げ捨てた。
続く。

